- 腰を反ると痛みとしびれが強くなる。
- すべり症と椎間板ヘルニアの違いは?
- すべり症は手術をしないといけない?
今回は、こんなお悩みを解決していきます。
「腰が痛い」「足がしびれる」「最近、長時間立っているとツラい」、その症状、実は『すべり症』かも知れません。
すべり症は、背骨の一部がズレて神経を圧迫し、腰痛や足のしびれを引き起こす疾患で、特に中高年の女性やスポーツ経験者に多く見られます。
「加齢のせいかも」と放置してしまうと、症状が悪化し、日常生活に大きな影響を及ぼす可能性もあります。
この記事では、すべり症の原因、症状、セルフチェック方法、やってはいけないことなど、分かりやすく解説しますので、ぜひ最後まで読んでください。
それでは、さっそく見ていきましょう。
すべり症について
すべり症とはどんなものか、詳しく見ていきましょう。
すべり症とは?
すべり症とは、腰椎(腰の骨)の一部が、その下にある腰椎に対して前後にずれてしまう状態です。
ずれによって神経が圧迫されたり、不安定になることで、痛みやしびれが生じます。
すべり症の種類
すべり症には、次の種類があります。
- 変性すべり症
- 分離すべり症
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
●変性すべり症
加齢に伴い、椎間板や背骨をつなぐ関節(椎間関節)が変形して不安定になり、椎骨がずれてしまうタイプ。
特に中年以降の女性に多く、4番目の腰椎で発生しやすい。
反り腰・立ち仕事の人に、なりやすい傾向があります。
腰を反らすと痛みが出る、長時間、立っていたり、歩いたりすると悪化し、安静にすると和らぐことが多いです。
●分離すべり症
分離すべり症は、若い頃のスポーツなどで腰椎に疲労骨折(腰椎分離症)が起こり、その部分が不安定になって、ずれてしまうタイプ。
特に、腰を反らす動きが多いスポーツ(野球、バレーボール、体操、柔道、ラグビー)をしていた人に発症する傾向がある。
初期は違和感や軽い痛み程度で放置することが多く、成人してから何かのきっかけで、レントゲン検査を受けて気がづくことが多い。
すべり症の原因
すべり症の原因は、次の通りです。
- 繰り返しの動作
- 軟骨のすり減り
- 筋肉や靭帯の弱る
- 不良姿勢、体の使い方による負担がかかる
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
繰り返しの動作
繰り返しの動作により腰の一部ばかりに負担がかかるとすべり症を起こしやすくなります。
特に中腰での繰り返しの動きは注意です。
例えば、スーパーの品出し、介護は中腰で繰り返しの動きをするので、もの凄く腰に負担がかかります。
また、ゴルフも中腰で捻りの動きが入るので、注意が必要です。
軟骨のすり減り
上記の繰り返しの動作を続けることで、背骨に軟骨である「椎間板」がすり減ると、背骨が不安定になり、すべり症を起こす原因になります。
筋肉や靭帯が弱る
背骨を支えている、筋肉や靭帯が弱ることで、すべり症を起こす原因になります。
上記のように、使い過ぎですべり症になる方もあれば、逆に運動不足で筋肉や靭帯が弱ることで、すべり症が起きることもあります。
筋肉や靭帯が弱るタイプのすべり症の方は、「腰に負担をかけた覚えはない」と言われることが多いです。
不良姿勢、体の使い方による負担がかかる
日々の生活の中で、不良姿勢が積み重なることも、すべり症の原因になります。
特に反り腰の姿勢で長時間立ち続けることや、イスに浅く腰かけて背中を丸めるクセは、背骨に大きな負荷をかけます。
▶︎関連記事:腰に負担をかけない座り方
すべり症の症状
すべり症の症状は、次の通りです。
- 腰を反ると症状が強くなる
- 夕方になると症状が強くなる
- 激痛と緩和を繰り返す
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
腰を反ると症状が強くなる
すべり症は、腰を反ると痛みやしびれが強く出ます。
また、洗濯物を干したり、立ち上がりなど、腰を伸ばす動作で症状が出る方もあります。
腰を反ると痛みが出るので、腰を丸めて猫背になっている方も多いです。
夕方になると症状が強くなる
朝よりも夕方の方が、重だるく感じやすいことも特徴。
激痛と緩和を繰り返す
背骨がすべって、神経を刺激し炎症ができると、数日は強い痛みが出ることがあります。
炎症が治ると何もなく、何かの拍子にまた炎症が起こり、強い症状が起きることを繰り返す人もいます。
すべり症を放置するとどうなる?
すべり症は、放置すると症状が進行し、次のような症状が現れます。
- 神経障害が進み。
- 歩行が困難になる。
- 排尿障害など、日常生活に大きな影響が出る。
症状が進行し、変形性腰椎症や脊柱管狭窄症になることもあります。
「ちょっと痛いだけだから」と自己判断で放置せず、気になる症状がある場合は、早めに整形外科や整体院で相談することが大切です。
すべり症と椎間板ヘルニアの違い
すべり症と椎間板ヘルニアのの違いは、次の通りです。
すべり症 | 椎間板ヘルニア | |
原因 | 背骨がずれる | クッションが飛び出す |
痛みが出やすい動き | 腰を反らす | 前かがみ |
年齢層 | 中高年に多い | 中・高でスポーツをしている人 10〜30代 |
症状 | 足のしびれ 腰の痛み | 足のしびれや力が入りにくい |
すべり症は腰を反らすと悪化し、椎間板ヘルニアは前屈みをすると、悪化するのが大きな違いです。
▶︎関連記事:坐骨神経痛と椎間板ヘルニアの違い
すべり症と脊柱管狭窄症の違い
すべり症と脊柱管狭窄症の違いは、次の通りです。
すべり症 | 脊柱管狭窄症 | |
原因 | 背骨がずれる | 背骨の中が狭くなる |
痛みが出やすい動き | 腰を反らす | 腰を伸ばす・長く歩く |
年齢層 | 中高年に多い | 中高年に多い |
症状 | 足のしびれ 腰の痛み | 足のしびれ 長く歩けない 足うらの異常感覚 |
脊柱管狭窄症は、しばらく歩くと「足の痛み」「しびれ」「脱力感」が出て歩けなくなり、少し休憩すると症状が和らぎ、また歩けるようになる、という特徴的な症状です。
また、腰には痛みを感じないことも多いです。
▶︎関連記事:脊柱管狭窄症について
すべり症でやってはいけないこと
すべり症でやってはいけないことは、次の通りです。
- 不良姿勢
- 長時間の同じ姿勢
- 過度の安静
- 激しいスポーツ
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
不良姿勢
不良姿勢は、避けましょう。
特に「仙骨座り」と言って、イスからずり落ちるような座り方は、腰に負担がかかるので避けましょう。
長時間の同じ姿勢
「座りっぱなし」「立ちっぱなし」など、長時間の同じ姿勢は、腰に負担をかけるので、避ける方がいいでしょう。
もし、「座りっぱなし」「立ちっぱなし」になることが多いなら、「小まめに腰を動かす」のがいいでしょう。
過度の安静
すべり症があるからといって、過度の安静にならないようにしましょう。
過度の安静になることで、上記でお話ししたように筋肉・靭帯が弱り悪化することがあるからです。
激しいスポーツ
激しいスポーツも避ける方がいいでしょう。
何を持って「激しいスポーツ」とするかは、人によって違うと思います。
なので、スポーツをするならしっかりと、基礎体力をつけてからする方がいいでしょう。
すべり症を悪化させないための工夫
すべり症を悪化させない工夫は、次の通りです。
- ウォーキング
- 正しく座る
- 膝を曲げて寝る
- インナートレーニング
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
ウォーキング
ウォーキングは、全身運動で体への負担も少なくできる運動でおすすめ。
ウォーキングをする時は、ウォーキングシューズを履くと効果的。
また、下記でお話しするインナー筋を鍛える運動にもなります。
ウォーキングをするのにどんなことに気をつけたらいいのだろう?やり方やポイントがわからない…そんなお悩みはありませんか? 実は、ウォーキングは「健康維持」に最適な運動ですが、ただ歩くだけでは効果を最大限得られません。[…]
正しく座る
正しく座ることで、腰にかかる負担を軽減することができます。
正しく座るポイントは、次の通りです。
●正しい座り方
- 深く腰掛けて背筋を伸ばす
- 坐骨(お尻の骨)で体重を支えるように意識する
- 膝の角度を90度にして、足裏を床につける
膝を曲げて寝る
膝を曲げると寝た状態でも、「背骨のS字のカーブ」を保ちやすくなります。
●寝方のポイント
- 仰向けで寝るときは膝下にクッションを入れると腰の反りを防ぎやすい
- 横向きで寝る場合は、膝の間にクッションを挟むと腰への負担が減る
- 柔らかすぎるマットレスは腰が沈みやすいので、適度な硬さのある寝具を選ぶ
インナートレーニング
筋肉には、次の2種類があります。
- アウター筋(表面の大きな筋肉)
- インナー筋(深部の細い筋肉)
インナー筋は体幹と言われることもあり、体を支える役割をしています。
インナー筋がしっかりとすることで、腰にかかる負担が減ります。
おすすめのインナートレーニングは、次の通りです。
- ウォーキング
- フロントブリッジ
- バードドッグ
- ドローイン
また、インナートレーニングをする時は呼吸を意識することも大切。
すべり症は手術しないといけない?
すべり症と診断されたからと言って、すぐに手術をしないといけないわけではありません。
まずは、保存療法を試みて経過を見ていきます。
保存療法で改善が見られず、日常生活に大きな支障が出ている場合は、手術も選択肢に入るので専門医と十分に相談し進めていきましょう。
また、以下のような症状がある場合は、すべり症が進行している可能性があります。
- 足のしびれや力が入りにくい
- 排尿障害(尿が出にくい・漏れるなど)
- 歩行困難や長距離が歩けない
このような症状がある場合は我慢をせず、なるべく早めに病院(整形外科)や整体院を受診しましょう。
しらひげ鍼灸整骨院での改善方法
すべり症の症状を改善するポイントは、「腰の安定」です。
当院では、すべり症の方の腰を安定させるために、次の方法を行なっていきます。
- アウター筋を緩和
- 各関節可動域の回復
- 運動連鎖の回復
- インナー筋にスイッチ
それぞれ、詳しくみていきましょう。
アウター筋を緩和
まずは、アウター筋の緩和を行います。
アウター筋が張っていると、下記で行う関節可動域の回復やインナー筋トレーニングが上手くできません。
そのため、アウター筋の緩和を行います。
各関節可動域の回復
背骨、股関節、膝関節、肩関節の主要関節を動かして、関節可動域を回復させていきます。
関節可動域に制限があると、下記の運動連鎖が崩れて、インナー筋も上手く使えず、結果的に腰が不安定になります。
なので、すべり症を改善するために、関節可動域を回復させていきます。
運動連鎖の回復
運動連鎖とは、体の連動した動きのこと。
例えば、『歩く』という動作では、膝や股関節、骨盤や背骨が動き、さらに上半身と下半身の捻りなど、さまざまな要素が関係します。
これらが連動することで、体はスムーズに動けるのです。
運動連鎖がしっかりとできることで、スムーズな体の動きになり、体に負担がかからない動きになります。
インナー筋にスイッチを入れる
インナー筋はアウター筋の筋肉のように、自分の意識で動かすことは難しい筋肉です。
なので、インナー筋に特化した動きをすることで、脳からの「インナー筋を使え」という指令が伝わりやすくなります。
すると、日常生活でもインナー筋を使う体へとなります。
インナー筋は奥深いところにあり、体を支える役割があり、日常生活でしっかりと使えることで腰の安定へと繋がります。
すべり症でよくある質問(Q&A)
よくある質問にお答えしていきます。
Q. すべり症のしびれは治りますか?
A. しびれは神経の圧迫が原因で起こるため、圧迫が改善すれば軽減する可能性があります。保存療法で効果がない場合は、手術で神経の通り道を広げる方法が検討される。
Q. 姿勢を良くするだけでも予防になりますか?
A. 姿勢の改善は非常に効果的である。特に反り腰や前かがみ姿勢が習慣になっている場合は、椎骨への負担が軽減され、症状の悪化を防ぐ効果が期待できる。
Q. すべり症は運動で治りますか?
A. 完全に治すことは難しいが、症状を軽くすることは可能です。状態に合った運動や正しい姿勢の見直しによって、背骨の安定性が高まり、神経の圧迫が軽減される。
Q. 痛みが強いときでもストレッチしていいですか?
A. 痛みが強いときは無理をせず、安静を優先するのが望ましい。症状が落ち着いてきた段階で、軽いストレッチやリハビリを再開するのがいいでしょう。
すべり症(まとめ)
この記事では、すべり症の原因や種類、症状の見分け方から、日常生活での注意点・対処法・改善のための具体的な取り組み方まで、整体師の視点から分かりやすく解説しました。
要点をまとめると以下の通りです。
- すべり症は背骨のズレにより神経を圧迫し、腰痛や足のしびれを引き起こす疾患。
- 変性すべり症は中高年女性に多く、分離すべり症はスポーツ経験者に多い。
- 放置すると、歩行障害や排尿障害など深刻な問題に発展するリスクがある。
- 腰を反らす動作や長時間の同一姿勢は悪化の原因になるので要注意。
- ウォーキング・正しい座り方・寝姿勢・インナーマッスル強化が改善の鍵。
- 重症例では手術も検討されるが、多くは保存療法で改善が見込める。
「痛いから動かない」ではなく、正しい動きで体を整えることが大切です。
すべり症と上手に付き合いながら、日常生活の中でできるケアを習慣にしていきましょう。
ご自身の体に合わせて、無理のない範囲から始めることが、回復への第一歩です。
「その腰痛、年齢のせい」と諦めず、今できる対策をコツコツ積み重ねていきましょう。
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