
上記の繰り返しの動作を続けることで、背骨のクッションである「椎間板」がすり減ってくると、背骨が不安定になり、すべり症を起こす原因になります。椎間板は一度すり減ると自然に元に戻ることが難しいため、早めのケアが大切です。
今回は、こんなお悩みを解決していきます。
「腰が痛い」「足がしびれる」「最近、長時間立っているとツラい」、その症状、実は『すべり症』かも知れません。
すべり症は、背骨の一部がズレて神経を圧迫し、腰痛や足のしびれを引き起こす疾患で、特に中高年の女性やスポーツ経験者に多く見られます。
「加齢のせいかも」と放置してしまうと、症状が悪化し、日常生活に大きな影響を及ぼす可能性もあります。
この記事では、すべり症の原因、症状、セルフチェック方法、やってはいけないことなど、分かりやすく解説しますので、ぜひ最後まで読んでください。
それでは、さっそく見ていきましょう。
すべり症の症状セルフチェック
以下の項目に当てはまるものがあれば、すべり症の可能性があります。
気になる症状がある場合は、整形外科や整体院に相談することをおすすめします。
- 腰を反らせると痛い、またはしびれが強くなる
- 腰を丸めると楽になる
- お尻や太もも、脚にも痛みやしびれが出ている
- 夕方になると腰が重だるく感じる
- しばらく歩くと足が重くなり、少し休むとまた歩ける
- 長時間の立ち仕事や歩行後に症状が悪化する
- 若い頃にスポーツを激しくしていた
特に「腰を反らすと痛い・丸めると楽」という特徴は、すべり症に多く見られるパターンです。
一方、腰を丸めたときや前かがみで痛くなる場合は、椎間板ヘルニアの可能性もあります。
また、「しばらく歩くと足が重だるくなり、座って休憩しないと歩けなくなる」という症状を「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」といいます。
すべり症が進行すると、この間欠性跛行が現れやすくなります。
すべり症について

すべり症とはどんなものか、詳しく見ていきましょう。
すべり症とは?
すべり症とは、腰椎(腰の骨)の一部が、その下にある腰椎に対して前後にずれてしまう状態です。
ずれによって神経が圧迫されたり、不安定になることで、痛みやしびれが生じます。

すべり症の種類
すべり症には、次の種類があります。
- 変性すべり症
- 分離すべり症
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
●変性すべり症
加齢に伴い、椎間板や背骨をつなぐ関節(椎間関節)が変形して不安定になり、椎骨がずれてしまうタイプ。
特に中年以降の女性に多く、4番目の腰椎で発生しやすい。
反り腰・立ち仕事の人に、なりやすい傾向があります。
腰を反らすと痛みが出る、長時間、立っていたり、歩いたりすると悪化し、安静にすると和らぐことが多いです。
骨粗鬆症(骨がもろくなる状態)がある方は、骨の強度が落ちてずれやすくなるため、より注意が必要です。
●分離すべり症
分離すべり症は、若い頃のスポーツなどで腰椎に疲労骨折(腰椎分離症)が起こり、その部分が不安定になって、ずれてしまうタイプ。
特に、腰を反らす動きが多いスポーツ(野球・バレーボール・体操・柔道・ラグビーなど)をしていた方に発症する傾向があります。
スポーツ選手では30〜40%の方が分離症になっているというデータもあるほどです。
初期は違和感や軽い痛み程度のことが多く、成人してから別の検査でたまたまレントゲンを撮って気づくケースも少なくありません。
すべり症の原因

すべり症の原因は、次の通りです。
- 繰り返しの動作
- 軟骨のすり減り
- 筋肉や靭帯の弱る
- 不良姿勢、体の使い方による負担がかかる
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
繰り返しの動作
繰り返しの動作により、腰の一部ばかりに負担がかかると、すべり症を起こしやすくなります。
特に、中腰での繰り返しの動きは注意です。
例えば、スーパーの品出し、介護は中腰で繰り返しの動きをするので、もの凄く腰に負担がかかります。
また、ゴルフも中腰で捻りの動きが入るので、注意が必要です。
荷物を持ち上げる際に腰を曲げた状態で持ち上げる動作も、椎骨に大きな力がかかるため、すべり症のある方には特に気をつけていただきたいポイントです。
軟骨のすり減り
上記の繰り返しの動作を続けることで、背骨に軟骨である「椎間板」がすり減ると、背骨が不安定になり、すべり症を起こす原因になります。
筋肉や靭帯が弱る
背骨を支えている、筋肉や靭帯が弱ることで、すべり症を起こす原因になります。
上記のように、使い過ぎですべり症になる方もあれば、逆に運動不足で筋肉や靭帯が弱ることで、すべり症が起きることもあります。
「腰に負担をかけた覚えはない」とおっしゃる方でも、長年の運動不足が積み重なっていることがあります。
不良姿勢、体の使い方による負担がかかる
日々の生活の中で、不良姿勢が積み重なることも、すべり症の原因になります。
特に反り腰の姿勢で長時間立ち続けることや、イスに浅く腰かけて背中を丸めるクセは、背骨に大きな負荷をかけます。
▶︎関連記事:腰に負担をかけない座り方
すべり症の症状

すべり症の症状は、次の通りです。
- 腰を反ると症状が強くなる
- 夕方になると症状が強くなる
- 激痛と緩和を繰り返す
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
腰を反ると症状が強くなる
すべり症は、腰を反ると痛みやしびれが強く出ます。
また、洗濯物を干したり、立ち上がりなど、腰を伸ばす動作で症状が出る方もあります。
腰を反ると痛みが出るので、腰を丸めて猫背になっている方も多いです。
夕方になると症状が強くなる
朝よりも夕方の方が、腰が重だるく感じやすいことも特徴です。
一日中動き続けることで腰への負担が積み重なり、夕方に症状がピークになるケースが多く見られます。
立ち仕事の方は特に実感されることが多い症状です。
激痛と緩和を繰り返す
背骨がすべって、神経を刺激し炎症ができると、数日は強い痛みが出ることがあります。
炎症が落ち着くと症状が和らぎ、また何かのきっかけで炎症が起きて強い症状を繰り返す、というパターンの方もいます。
「先週は楽だったのに、急にまた痛くなった」という経験がある方は、このパターンに当てはまるかもしれません。
すべり症を放置するとどうなる?(進行度について)
すべり症は放置すると、段階的に症状が進行することがあります。
- 神経障害が進み。
- 歩行が困難になる。
- 排尿障害など、日常生活に大きな影響が出る。
症状が進行し、変形性腰椎症や脊柱管狭窄症になることもあります。
「ちょっと痛いだけだから」と自己判断で放置せず、気になる症状がある場合は早めに整形外科や整体院に相談されることをおすすめします。
すべり症と椎間板ヘルニアの違い

すべり症と椎間板ヘルニアの違いは、次の通りです。
| すべり症 | 椎間板ヘルニア | |
| 原因 | 背骨がずれる | クッションが飛び出す |
| 痛みが出やすい動き | 腰を反らす | 前かがみ |
| 年齢層 | 中高年に多い | 中・高でスポーツをしている人 10〜30代 |
| 症状 | 足のしびれ 腰の痛み | 足のしびれや力が入りにくい |
すべり症は腰を反らすと悪化し、椎間板ヘルニアは前屈みをすると、悪化するのが大きな違いです。

▶︎関連記事:坐骨神経痛と椎間板ヘルニアの違い
すべり症と脊柱管狭窄症の違い

すべり症と脊柱管狭窄症の違いは、次の通りです。
| すべり症 | 脊柱管狭窄症 | |
| 原因 | 背骨がずれる | 背骨の中が狭くなる |
| 痛みが出やすい動き | 腰を反らす | 腰を伸ばす・長く歩く |
| 年齢層 | 中高年に多い | 中高年に多い |
| 症状 | 足のしびれ 腰の痛み | 足のしびれ 長く歩けない 足うらの異常感覚 |
脊柱管狭窄症は、しばらく歩くと「足の痛み」「しびれ」「脱力感」が出て歩けなくなり、少し休憩すると症状が和らぎ、また歩けるようになる、という特徴的な症状です。
また、腰には痛みを感じないことも多いです。
▶︎関連記事:脊柱管狭窄症について
すべり症でやってはいけないこと

すべり症でやってはいけないことは、次の通りです。
- 不良姿勢
- 長時間の同じ姿勢
- 過度の安静
- 激しいスポーツ
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
不良姿勢
不良姿勢は、避けましょう。
特に「仙骨座り」と言って、イスからずり落ちるような座り方は、腰に大きな負担がかかるので注意が必要です。
また、あぐらで長時間座ることも骨盤が後ろに傾きやすく、腰への負担が増えます。

長時間の同じ姿勢
「座りっぱなし」「立ちっぱなし」など、長時間の同じ姿勢は、腰に負担をかけるので、避ける方がいいでしょう。
仕事上どうしても同じ姿勢が続く場合は、30〜60分に1回を目安に、少し立ち上がったり、腰を軽く動かすだけでも違います。
小まめに体を動かす習慣が大切です。
過度の安静
すべり症があるからといって、過度の安静にならないようにしましょう。
過度の安静になることで、上記でお話ししたように筋肉・靭帯が弱り悪化することがあるからです。
激しいスポーツ
腰に強い衝撃が加わる激しいスポーツは避けた方がいいでしょう。
ランニングやジャンプを繰り返す動作は、着地の衝撃が腰にダイレクトに伝わります。
スポーツをするなら、まず基礎体力とインナー筋をしっかりと整えてからにしましょう。
腰を反らすストレッチ
ストレッチには特に注意が必要です。
腰を反らすストレッチは、すべり症の方には禁物です。
腰を反らすことで、腰椎が前方にさらに押し出されてしまい、症状を悪化させる原因になります。
また、ストレッチポールやテニスボールを腰の一点に当てて圧をかけるような方法も、痛みが強くなることがあるため注意しましょう。
おすすめは、腰を丸める方向(前屈み)のやさしいストレッチです。
ただし、痛みやしびれを感じた場合はすぐに中止してください。
腰を曲げたままの荷物の持ち上げ
荷物を持ち上げる際に、腰だけを曲げて拾う動作は椎骨に大きな負担をかけます。
代わりに、膝を曲げてしゃがんでから荷物を体に近づけて持ち上げるようにしましょう。
これだけで腰への負担がかなり変わります。
すべり症を悪化させないための工夫

すべり症を悪化させない工夫は、次の通りです。
- ウォーキング
- 正しく座る
- 膝を曲げて寝る
- インナートレーニング
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
ウォーキング
ウォーキングは、全身運動でありながら腰への負担が比較的少ない、すべり症の方にもおすすめの運動です。
ウォーキングをする時は、ウォーキングシューズを履くと効果的。
水中ウォーキングも、浮力によって腰への負担が軽くなるため、痛みが強い時期にもおすすめです。
正しく座る
正しく座ることで、腰にかかる負担を軽減することができます。
正しく座るポイントは、次の通りです。
●正しい座り方
- 深く腰掛けて背筋を伸ばす
- 坐骨(お尻の骨)で体重を支えるように意識する
- 膝の角度を90度にして、足裏を床につける
膝を曲げて寝る
膝を曲げると寝た状態でも、「背骨のS字のカーブ」を保ちやすくなります。
●寝方のポイント
- 仰向けで寝るときは膝下にクッションを入れると腰の反りを防ぎやすい
- 横向きで寝る場合は、膝の間にクッションを挟むと腰への負担が減る
- 柔らかすぎるマットレスは腰が沈みやすいので、適度な硬さのある寝具を選ぶ
インナートレーニング
筋肉には、次の2種類があります。
- アウター筋(表面の大きな筋肉)
- インナー筋(深部の細い筋肉)
インナー筋は体幹と言われることもあり、体を支える役割をしています。
インナー筋がしっかりとすることで、腰にかかる負担が減ります。
おすすめのインナートレーニングは、次の通りです。
- ウォーキング
- フロントブリッジ
- バードドッグ
- ドローイン
インナートレーニングをするときは、呼吸を止めないように意識することも大切なポイントです。
コルセットの活用
痛みが強い時期には、コルセットを活用することで腰を安定させ、症状を和らげる効果が期待できます。
ただし、長時間コルセットに頼りすぎると、筋力が低下してしまうことがあります。
痛みが落ち着いてきたら、コルセットへの依存を少しずつ減らし、自分の筋力で腰を支えられる体づくりを目指しましょう。
すべり症は手術しないといけない?

すべり症と診断されたからと言って、すぐに手術をしないといけないわけではありません。
まずは、保存療法を試みて経過を見ていきます。
保存療法で改善が見られず、日常生活に大きな支障が出ている場合は、手術も選択肢に入るので専門医と十分に相談し進めていきましょう。
また、以下のような症状がある場合は、すべり症が進行している可能性があります。
- 足のしびれや力が入りにくい
- 排尿障害(尿が出にくい・漏れるなど)
- 歩行困難や長距離が歩けない
このような症状がある場合は我慢をせず、なるべく早めに病院(整形外科)や整体院を受診しましょう。
しらひげ鍼灸整骨院での改善方法

すべり症の症状を改善するポイントは、「腰の安定」です。
当院では、すべり症の方の腰を安定させるために、次の方法を行なっていきます。
- アウター筋を緩和
- 各関節可動域の回復
- 運動連鎖の回復
- インナー筋にスイッチ
それぞれ、詳しくみていきましょう。
アウター筋を緩和
まずは、アウター筋の緩和を行います。
アウター筋が張っていると、下記で行う関節可動域の回復やインナー筋トレーニングが上手くできません。
そのため、アウター筋の緩和を行います。
各関節可動域の回復
背骨、股関節、膝関節、肩関節の主要関節を動かして、関節可動域を回復させていきます。
関節可動域に制限があると、下記の運動連鎖が崩れて、インナー筋も上手く使えず、結果的に腰が不安定になります。
なので、すべり症を改善するために、関節可動域を回復させていきます。
運動連鎖の回復
運動連鎖とは、体の連動した動きのこと。
例えば、『歩く』という動作では、膝や股関節、骨盤や背骨が動き、さらに上半身と下半身の捻りなど、さまざまな要素が関係します。
これらが連動することで、体はスムーズに動けるのです。
運動連鎖がしっかりとできることで、スムーズな体の動きになり、体に負担がかからない動きになります。
インナー筋にスイッチを入れる
インナー筋はアウター筋の筋肉のように、自分の意識で動かすことは難しい筋肉です。
なので、インナー筋に特化した動きをすることで、脳からの「インナー筋を使え」という指令が伝わりやすくなります。
すると、日常生活でもインナー筋を使う体へとなります。
インナー筋は奥深いところにあり、体を支える役割があり、日常生活でしっかりと使えることで腰の安定へと繋がります。
すべり症でよくある質問(Q&A)

よくある質問にお答えしていきます。
Q. すべり症のしびれは改善しますか?
A. しびれは神経の圧迫が原因で起こることが多いため、圧迫が緩和されることで軽減する可能性があります。
早い段階でインナー筋を鍛えて腰を安定させ、腰椎への負担を減らすことが大切です。
保存療法で改善が見られない場合は、手術で神経の通り道を広げる方法が検討されることもあります。
まずは整形外科や整体院に相談してみましょう。
Q. 姿勢を良くするだけでも予防になりますか?
A. 姿勢を整えることは、すべり症の悪化を防ぐうえでとても大切なことです。
特に反り腰や前かがみ姿勢が習慣になっている場合、椎骨への負担が積み重なって症状が悪化しやすくなります。
姿勢の改善はすべり症の予防・悪化防止に役立ちますが、姿勢だけに頼らず、インナー筋を鍛えて体の内側から腰を支える力をつけることが、より根本的なアプローチになります。
Q. すべり症は運動で改善しますか?
A. 状態に合った運動を継続することで、症状が楽になる方は多くいらっしゃいます。
ウォーキングやインナートレーニングなど、腰に負担をかけずに背骨の安定性を高める運動は有効です。
ただし、腰を反らすストレッチや激しいスポーツは逆効果になることがあるため、ご自身の状態に合った方法を選ぶことが大切です。
Q. 痛みが強いときでもストレッチしていいですか?
A. 痛みが強いときは、無理をせず安静を優先することが望ましいです。
特に腰を反らすストレッチは、症状が落ち着いているときでも控えた方がよいです。
症状が和らいできた段階で、腰を丸める方向のやさしいストレッチや軽いウォーキングから少しずつ再開するのがいいでしょう。
Q. コルセットはいつまで使えばいいですか?
A. 痛みが強い急性期には、コルセットで腰を安定させることは有効です。
ただし、長期間コルセットに頼りすぎると筋力が低下し、かえって腰が不安定になりやすくなります。
症状が落ち着いてきたら、少しずつコルセットなしで過ごせる時間を増やし、インナー筋を鍛えることで自分の力で腰を支えられる体を目指しましょう。
すべり症(まとめ)

この記事では、すべり症の原因や種類、症状の見分け方から、日常生活での注意点・対処法・改善のための具体的な取り組み方まで、整体師の視点から分かりやすく解説しました。
要点をまとめると以下の通りです。
- すべり症は背骨のズレにより神経を圧迫し、腰痛や足のしびれを引き起こす疾患。
- 変性すべり症は中高年女性に多く、分離すべり症はスポーツ経験者に多い。
- 放置すると、歩行障害や排尿障害など深刻な問題に発展するリスクがある。
- 腰を反らす動作や長時間の同一姿勢は悪化の原因になるので要注意。
- ウォーキング・正しい座り方・寝姿勢・インナーマッスル強化が改善の鍵。
- 重症例では手術も検討されるが、多くは保存療法で改善が見込める。
「痛いから動かない」ではなく、正しい動きで体を整えることが大切です。
すべり症と上手に付き合いながら、日常生活の中でできるケアを習慣にしていきましょう。
ご自身の体に合わせて、無理のない範囲から始めることが、回復への第一歩です。
「その腰痛、年齢のせい」と諦めず、今できる対策をコツコツ積み重ねていきましょう。
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